交通事故によるケガの治療で【健康保険】を使うべきか否か
日常生活で起こるケガの通院では、健康保険を使いますが、交通事故の場合は、少し特殊です。相手方の保険会社から健康保険を使うことを促されることもあれば、医療機関から使用を拒否されることもあります。
ネット検索をすると、「健康保険を使った方が得する」という情報もあれば、「自賠責保険を使った方が良い」という情報も出てきます。
「これって、どういうことなの?」そんな風に、疑問に思われる方が多いかと思います。実際、健康保険を使った方が良いケースとそうでないケースが存在し、メリット・デメリットや注意事項がありますので、その辺りについてしっかり解説していきます。
目次
交通事故の治療で健康保険は使える?
そもそも交通事故の治療で、健康保険は使えるのでしょうか?結論から言いますと、使えます。昭和43年に現在の厚生労働省から日本医師会に対して、「健康保険及び国民健康保険の自動車損害賠償責任保険などに対する求償事務の取扱い」の通達を行っています。これによって、交通事故によるケガも健康保険を使用できる根拠になりました。
厚生労働省の認可を得ている施設で使える
健康保険を使える施設は、厚生労働省から認可を得ている病院やクリニックなどの医療機関はもちろん、接骨院でも使用できます。
事実、「病院は混んでいて、待たされるので嫌だ」「診療時間に間に合わない」「できるだけ薬は使いたくない」「痛み止めだけでは良くならない」などの理由で、接骨院へ通院される方も多いです。
医療機関が健康保険の利用を断る理由
医療機関によっては、健康保険による交通事故のケガの治療を断るところもあります。その理由は、
・使えないと誤認しているため
・手続きが煩雑で面倒なため
・自由診療も対象となる自賠責保険とは異なり、健康保険内の治療は制限があり売上が減るため
などが考えられます。
健康保険が使えない3つのケース
下記のようなケースでは、健康保険は使えませんのでご注意ください。
1. 通勤中や業務中に起こった交通事故の場合
「労災給付」の扱いになりますので、使用できません。
2.医療機関ではないところで施術を受ける場合
国家資格を持たないカイロプラクティックや整体、もみほぐしを謳うクイックマッサージ店などは、厚労省の認めた医療機関ではないため、全額保険の対象外です。
3. 自由診療(保険外診療)の場合
健康保険の適用外となる医薬品や高度な治療などは、自由診療扱いのため自費となります。
交通事故で健康保険を使った方が良い4つのケース
相手のいる交通事故の場合、通常は加害者側の保険会社を通じて慰謝料や治療費を請求するため、被害者側の健康保険を使って治療を受ける必要はありません。相手方の任意保険会社が、通院している病院や接骨院への治療費の支払い手続きも行うため、窓口負担0円で通院できます。これを「任意一括対応」といいます。
ただ、下記のようなケースの場合は、健康保険を使って治療を受けた方が良いでしょう。
1. 相手が任意保険に未加入の場合
経済的に困窮しているような相手の場合、強制保険である自賠責保険には加入していても、自動車保険(任意保険)には未加入の場合があります。こうしたケースの場合、被害者自身が自賠責保険(共済)へ被害者請求を行う必要が出てくることが多いです。手続きが煩雑で時間もかかるため、一旦健康保険を使って窓口負担を減らしながら治療を受けた方が良いでしょう。
2. 相手が無保険者の場合、ひき逃げの場合
事故の相手が無保険で資力がない場合や相手が不明なひき逃げの場合、政府保障事業によって後から補償を受けることが可能です。こうしたケースでも、一時的に被害者自身が立替える必要があるため、医療機関でのご自身の負担額を抑えるために、健康保険の使用は有効です。健康保険を使えば、支払う負担額は1割~3割で済ませられます。
3. 自損事故で、自損事故保険や人身傷害保険に未加入の場合
自賠責保険は、交通事故の相手(被害者 [同乗者含む])を救済する保険制度です。そのため、単独の事故である自損事故の場合、自賠責保険は適用されません。こうした場合も、健康保険を使うことで、医療費負担を抑えられます。
4. ご自身が加害者で、人身傷害保険に未加入の場合
加害者であっても、過失割合が10:0のような無責事故(相手方に非がない)でない限り、相手方の自賠責保険を使って治療を受けることは、制度上「可能」です。
ただ、加害者の場合、ご自身が加入している自動車保険の人身傷害保険を使って治療を受ける方も多いです。人身傷害保険は加入率が高く、治療費や休業損害などの慰謝料も支払われ、過失相殺もなく、なおかつ保険の等級が据置となるケースもあるからです。補償内容は各社のプランによって異なるため、一度確認してみましょう。もし未加入の場合は、健康保険を利用するのも一つの手です。
交通事故の治療で健康保険を使う3つのデメリット
前述したケース以外は、健康保険を使った交通事故の治療はあまりお勧めできません。その理由は、
1. 治りが悪くなったり、後遺症が残ったりするリスク
交通事故の治療に限らず、専門性の高い治療や新しい治療法、高度な技術は健康保険の適用外(自由診療)となります。自賠責保険や人身傷害保険であれば、自由診療も保険適用で窓口負担なく受けられますが、健康保険は受けられません。
医療機関で受けられるベストな治療法ではなく、保険の範囲内で行える一般的な治療に制限されてしまうため、治りが遅くなったり、後遺症が残ってしまったりするリスクが高まります。
2. 書類の手続きが煩雑
通常のケガであれば、病院の窓口へ保険証を出すだけで、健康保険を使えます。ですが、交通事故で健康保険を使う場合は、第三者行為による傷害届出を行う必要があり、複数の書類を作り保険者(けんぽ協会や組合など)へ提出しなければなりません。
3. 毎回、窓口負担がかかる
自賠責保険の場合、保険会社と医療機関が代理で精算を行うため、患者側は窓口負担0円で通院できます。一方、健康保険の場合は、毎回1~3割の負担を支払いながら通院する必要があります。そのため、数ヶ月通うことを考えると、立替とはいえ、負担に感じる方もいらっしゃるでしょう。
健康保険を使った方が「得になる」説とは?
損害賠償額のうち、医療機関へ支払う治療費が増えると、その分ご自身がもらえる慰謝料(手取額)が減ってしまうため、健康保険を使って治療費を抑えた方が良い、というのが「得になる」説の理論です。
■過失割合が加害者:被害者=80:20の場合の一例
健康保険を不使用 |
健康保険を使用(3割負担) |
|
治療費① |
200万円(自由診療) |
100万円(保険診療) |
慰謝料・休業損害など② |
300万円 |
300万円 |
損害賠償額の合計③ |
500万円 |
400万円 |
過失相殺後の賠償額④ |
400万円 |
264万円 |
受け取れる金額(示談金額) |
200万円(④–①) |
234万円(④-B) |
上記のようなケースの場合、たしかに手取額が34万円も増額しているため、一見「お得」のように見えます。
ですが、上記の場合30万円の自己負担を強いられます。加えて、ベストな治療ができないために、治りが悪く、辛い症状が長引くリスクがあります。肉体的・精神的苦痛のせいで、仕事を休んだり、仕事の生産性が落ちたり、職場や家庭の人間関係が悪化したりすることもあるでしょう。
こうしたことを踏まえて総合的に考えると、やはり健康保険を使って治療を受けた方が良いケースは稀ではないでしょうか。
健康保険に切り替える場合の手続き
交通事故のように、第三者から受けたケガによる治療の場合は「第三者行為による傷病届」を保険者(協会、組合など)に提出してください。ケガの状態などで、すぐに提出できないときも、まずは電話をして交通事故の内容を話しておき、早めに届出をする必要があります。
第三者行為による傷病届に必要な書類
「第三者行為による傷病届」をするのに必要な書類は5種類あります。
・「交通事故、自損事故、第三者(他人)等の行為による傷病(事故)届」
・「負傷原因報告書」
・「事故発生状況報告書」
・「損害賠償金納付確約書・念書」「損害賠償金納付確約書」
・「同意書」
※こちらで実際の書類が確認できます。
「ただ書類を出せばよい」という訳ではなくて、書類内容が煩雑です。例えば、交通事故の発生状況を詳しく記入することが必要ですし、加害者側に書いてもらうよう請求しないといけない手順もあります。その際、署名を拒否されてしまうこともありますが、その場合は理由を書いて未記入で提出も可能です。とはいえ、面倒な手続きではあります。
こんなことが、交通事故での治療に健康保険を使う場合は、起こってくるのです。ケガをしていて、仕事も行かれない、そんな状態で届出を行うのは、精神的にも苦痛が増えますよね。
交通事故治療の経験が豊富なドリーム接骨院では、保険の相談もOK!
当院は、交通事故の治療に特化した接骨院です。自賠責保険や人身傷害保険を使えば、窓口0円で通院していただくことが可能です。
また、交通事故への経験が豊富なため、保険に関するご相談にも対応できます。治療中に遭遇した、保険会社とのやり取りや、「こんなことを打診されたんだけど」や「示談を勧められて…」などの困ったことへのご相談も、患者様の味方となって親身にアドバイスさせていただきます。
いつでも、お気軽にご相談ください。ベストな策を一緒に考えます。