交通事故の加害者になってしまった時にやるべきことは?法的責任を徹底解説
どれだけ安全運転を心がけていても、車を運転していれば交通事故の加害者になってしまうリスクが常にあります。
交通事故の加害者になるとやるべきことや負うべき法的責任が数多くあり、それぞれ冷静に対処しなければなりません。
今回は交通事故の加害者になった時にやるべきことや負うべき法的責任を解説します。
目次
交通事故の加害者になった時に必ずやるべきこと
交通事故の加害者になると気が動転してしまう方が多くいます。
「なんてことをしてしまったんだ…。」と悲観的になり、本当にすべきことがわからなくなってしまう場合も。
そんな中でも交通事故の加害者になった時に必ずやるべきことがいくつかありますので、落ち着いて事故に対処しましょう。
被害者の救護
交通事故の被害者を道路にそのまま置いておくわけにはいきません。
真っ先に被害者の救護に当たってください。ほかにもやるべきことがいくつもありますが、優先的に行うべきなのが被害者の救護です。
道路交通法では「加害者は被害者の救護をしなければならない」と義務付けられていますので、そのまま放置し続けると法律違反になりかねません。
もし、道路交通法違反になると以下の罰則を受ける必要があります。
- ・5年以下の懲役
- ・50万円以下の罰金
そして、人の死傷が交通事故の加害者に起因する場合は以下の罰則となります。
- ・10年以下の懲役
- ・100万円以下の罰金
法律違反にならないためにもまずは被害者の救護が先決です。以下では被害者の救護に関してやるべきことをご紹介しています。
車を安全な場所へ移動させる
被害者を救護するには、車を止める必要があります。
もちろんですが、道路の真ん中に車を放置してはいけません。いったん安全な場所へ車を移動させ、被害者の救護に当たってください。車の移動先によっては別の法律違反になってしまいますので、必ず止めても大丈夫な場所に止めるようにしましょう。
基本的には、現場近くの路肩に止めればOKです。ただ、交通量が多かったり止められるスペースが十分に確保できない場合は、多少離れていても構いません。
救急車を呼ぶ
自分の手で被害者をなんとか助けたい気持ちは重々理解できますが、より救護に優れた人物に助けを求める方が被害者の生存確率は高いです。
車から降りて被害者を確認したら真っ先に119番通報してください。被害者の状態や現場の説明を救急隊員にして、そのあと以下の処置を行いましょう。
- ・ガーゼやハンカチで止血する
- ・頭部に傷がないか確認する
- ・後続事故の可能性がある場合は、被害者を安全な場所へ移動させる
交通事故ではむち打ち症など目に見えない怪我をしている可能性があります。むやみに被害者を動かさずに必要最低限の動きで安全な場所までの移動が求められます。
救命措置を施す
救急車を呼んでから現場に到着するまでの平均時間は約8分です。
その間、何もせずに立ち尽くしていると最悪の場合、被害者が死亡してしまうかもしれません。救急車が来るまで加害者としてできる限りの救護を続けるようにしてください。できる限りの救護が被害者の命運を左右します。
もし、救急車が来て救命救急士から指示を出されたならそれに沿って動きましょう。決して「多分こうだろう」と憶測で動かないようにしてください。
道路安全の確保
交通事故を起こしてしまうと、その事故の処理が完結するまで道路の一部を閉鎖する必要があります。
しかし、それに気づかずに車が突っ込んで来る可能性もゼロではありません。二次災害を起こしてしまう可能性がありますので道路の安全確保を徹底しましょう。もし、二次災害を起こしてしまうと危険防止義務違反として加害者が法に問われます。
道路安全の確保としてできることは以下の通りです。
- ・発煙筒や停止表示器材を使って車があると伝える
- ・後続車を誘導する
- ・散らばっている車の破片を拾う
万が一、危険防止義務違反となれば1年以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられてしまいます。
警察へ届け出る
救急車を呼び、被害者の救護が終われば警察へ届け出ましょう。
被害者に外傷がなかったとしても交通事故を起こしている事実は消えません。あくまで「事故」を起こしていますので必ず警察へ届け出るようにしてください。警察へ届け出たあとは以下のような情報を提供しなければなりません。
- ・事故発生日時・場所
- ・死傷者の数
- ・怪我の具合
- ・損壊してしまった物・その具合
- ・積載物情報
- ・被害者に対して行った救護活動
これらの情報を元に警察官は事故現場の実況見分を行います。当然ですが、交通事故を起こした結果、法に違反してしまう場合もあります。
もし、法に違反しているのの発覚を恐れ警察への届け出を怠ると報告義務違反となります。処罰として3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。
連絡先を共有する
交通事故の加害者と被害者同士が連絡先を共有するのも欠かさずに行いましょう。
被害者は加害者に対して損害賠償請求を行う権利があります。加害者からすると損害賠償請求をされるのは嫌かもしれませんが、交通事故を起こしてしまったため拒否する権利はありません。被害者が動いた内容に加害者は従うしかないのです。
ちなみに、むち打ち症などの外傷がなくその場では自覚症状がないような症状もあります。後々、症状が悪化する場合も考えられますので「今は問題ないから大丈夫」と言われても必ず連絡先の共有はしておいてください。
現場の写真撮影をする
警察も現場撮影はしますが、加害者も現場撮影をしておいてください。
- ・事故の状況
- ・道路の見通しの良し悪し
- ・信号機の有無
交通事故を起こした場所の周辺情報は写真に残しておいてください。万が一、被害者が感情的になり膨大な損害賠償請求を行ってきたとしても加害者として反論がしやすくなります。また、加害者としての立場を覆すような立証ができるかもしれません。写真は撮影しておいて損はありません。
けが治療中に加害者が被害者にできること
交通事故の被害者の多くはそのまま病院へ搬送されます。
加害者として被害者の救護をしただけで役目を果たしたわけではありません。怪我治療中に被害者にできることがいくつかあります。
お見舞いに行く
被害者とのやりとりは加害者と直接ではなく、基本的に任意保険会社が代行します。
そのため、連絡先を共有していたとしても被害者と直接話すのはおすすめできません。しかし、だからと言って加害者として何もしないのはよくありませんから被害者の元へとお見舞いに行きましょう。被害者が「もう来なくても大丈夫です」と言われても最低限の礼儀を元にお見舞いに行くのが基本です。
ただ、あまりにも被害者が拒否をする場合は加害者としての立場もありますからお見舞いに行くのはおすすめできません。
示談交渉を任意保険会社に依頼する
加害者が被害者に損害賠償金などのやりとりをするには、示談交渉が必要です。
損壊してしまったものも含め、交通事故のやりとりのほとんどは話し合いになります。示談が成立した結果として作成された「和解契約書」は不測の事態を除き内容を覆せません。裁判上で和解が成立してしまうと確定判決として見なされますので、強制執行が可能になります。
話し合いを避けず、被害者と加害者としての立場で話し合うのが大切です。
交通事故の加害者が負うべき法的責任とは
交通事故の加害者が負うべき法的責任は以下の3つになります。
- ・民事責任
- ・刑事責任
- ・行政責任
それぞれの責任は別個で考えられます。つまり、民事責任を受けたからといって行政責任を受けなくてもよいとはなりません。
民事責任
民事責任は、被害者が受けた人的・物的損害を賠償する責任を言います。
例えば、以下のような民事責任があります。
- ・積極損害:治療費・入院費用・付添費用・通院交通費など
- ・消極損害:休業損害・逸失利益など
- ・精神的損害:慰謝料など
- ・物的損害:修理費用など
民事責任を受ける場合、被害者の治療費や医療費を支払わなければなりません。これらの損害については以下の責任が根拠となります。
- ・運行供用者責任
- ・不法行為責任
- ・使用者責任
ほかにも責任が存在します。
刑事責任
刑事責任は、加害者が法で定められている刑を受けなければならない責任を言います。
例えば、以下のような刑事責任があります。
- ・過失運転致死傷罪
- ・危険運転致死傷罪
- ・加湿建造物損壊罪
これらの刑事責任は、懲役刑や禁固刑になる可能性があります。民事責任のように治療費や医療費を支払うだけではありません。
行政責任
行政責任は、運転者の免許取り消しや停止などの処分を受けなければならない責任を言います。
日本の運転免許証には点数制度が採用されており、交通事故などのルール違反をした場合は一定の点数が加算されるようになっています。過去3年間の累計点数が基準値を超えると行政責任を受ける必要があるのです。
例えば、以下が違反点数ごとの免停期間です。
- ・6〜8点:30日
- ・9〜11点:60日
- ・12〜14点:90日
点数は蓄積制となっており、一発で免停になる場合はほとんどありません。ただ、交通事故の内容により一発免停の可能性はありえます。
交通事故の加害者になったら素早く適切な対処を
交通事故の加害者になってしまったら、真っ先に被害者の救護をしましょう。
そして、そのあとに救急車を呼び警察への届け出など加害者として然るべき対処をするのが基本です。被害者の怪我治療中にはお見舞いに行き、示談交渉などやるべきことがたくさんありますので落ち着いて対処をするようにしてください。
また、交通事故の加害者であっても怪我をしている場合は病院や接骨院で治療を受けてください。人身傷害補償保険を活用すれば治療費の窓口負担がなく、自分も慰謝料を受けられるかもしれません。